旅のうねうね グレゴリ青山

独特な味わいのある絵と登場人物たちの旅心をくすぐるやりとり。なによりそのゆるい空気感。芸術の域に達した感のある旅情あふれる旅コミックエッセイ。2012年7月31日刊行。

よい思い出のある旅先は、もう二度と戻れない桃源郷のようなところだと思う

冒頭の「サデックの一日」という章の最後の一コマ。草木の生い茂る田舎道を進むおんぼろ小型バスの後ろ姿の絵に添えられた文章だ。もうこのシーンだけで僕はキュンキュンきた。ツボというかなんというか。そして本書にはそんなシーンがこれでもかというくらい満載なのだ。

旅の思い出って船の航跡に似てる。進んでいく時、船のまわりにうねうねした波の模様ができて、やがて消えていく。旅をしている人のまわりにも、うねうねとした思い出の模様ができる。

あとがきから。あぁ。つまり僕はそのうねうねにときめくのだな。例えば、長期旅行から帰ってきたばかりの人の話が楽しいのは、旅そのものの話じゃなくて、まだうねうねした模様がはっきりしていて、なんならまだそいつ自身がうねうねしているからなんだろうな。なかなかうまく説明できないし、説明しようとも思わないけど、特につげ義春田中小実昌あたりにときめく人にはオススメ。とにかく旅好きな人にとってはとても満足度の高い一冊だというのは間違いない。

旅のうねうね
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だから混浴はやめられない 山崎まゆみ

Posted 2月 1st, 2012 by kzmr and filed in 山崎まゆみ

温泉ライターとして10年以上のキャリアがある著者が混浴の魅力を余すことなく綴った一冊。2008年10月刊行。

少子化や単独世帯の増加で、家族の団欒というものが減ってきている現代。また、かつて盛んに行われていたが、なくなりつつあるご近所づきあい。希薄になりつつある人との触れ合いの原点にも思えるのが、混浴風呂での出会いであり語らいである。
前書きより抜粋

冒頭のこの文章からも分かるように、キャッチーで挑戦的な本書のタイトルとは裏腹で、いたって真剣に混浴風呂の魅力が綴られている。色っぽい内容だけを期待して開く本でないことはたしかだ。

目次

第1章 そこは恋が始まる場
第2章 主導権を握るのは、やっぱり女性
第3章 失われた原風景を求めて
第4章 良質な湯と豊富な量、そこは理想の温泉郷
第5章 混浴に学ぶ人としての作法
第6章 混浴というセラピー

第1章は思わせぶりな見出し。男性からすれば女性と混浴なんて想像するだけで素敵だけど、
喜びましょう、女性の目から見ても混浴風呂では男性が色っぽく見えているらしいですよ!
でも実際本当にその場に出くわすと案外ガチガチになってしまう気がするな。第2章では一度慣れてしまうと、より混浴を楽しんでいるのは女性の方だよというような内容。なんか納得。
さ て、本書の真骨頂はここから。第3章、第4章では混浴の成り立ちや行為を掘り下げ、本質に迫っていく。スケベ心で読み始めた人もガッカリするどころか、 きっと引きこまれていくはず。
著者の豊富な知識や経験にもとづく考察が面白いというのもあるけど、やはり混浴そのものが奥深いということなんだろう。
第5章、第6章では著者のこれまでの経験や出会いをもとに、混浴から得られる学びや癒しが実例をもって紹介される。けっこうじんわりくる話もあり、読み終えたときにはそれこそ温泉から出てきたばかりのようなほっこりした気分になった。

さしづめ混浴の入門書と言ってよいかもしれないが、「だから混浴はやめられない」というタイトルどおり、著者がいかに混浴に魅力を感じているかが強く伝わってくる。かなり熱い混浴入門書だ。混浴という文化が細々ながらも残っている日本に生きていてよかったと素直に思う。
さてさて。巻末に著者の薦める混浴温泉ベスト50が掲載されているのである。いくしかないでしょ!
 

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地雷を踏んだらサヨウナラ 一ノ瀬泰造

26歳でこの世を去った戦争カメラマン一ノ瀬泰造の書簡集。写真の掲載も多数。

著者の一ノ瀬泰造は1972〜1973年にかけてベトナム・サイゴン(ホーチミン)、 カンボジア・プノンペン、同じくシェムリアプなどで、ベトナム戦争やカンボジア内戦を取材。 多くの写真を撮影した。UPIニュース写真月間最優秀賞も受賞している。本書に収められている書簡は、そのときに日本にいる両親や友人、先生等に宛てたものである。 1999年浅野忠信主演で映画化され、話題となった。

本書で浮かび上がる素顔の一ノ瀬泰造は、野心的で、無謀で、そして底抜けに明るい。

そんな若さの溢れる著者だったから戦争の悲惨さを撮り続けることができたのだろう。まさに命をかけて、好きなこと=写真に取り組んだその姿はあまりにも眩しい。

若さとはこんなに素晴らしいものだったのかと感動せずにはいられなかった。

ぜひ若者に読んでほしい一冊だ。 また、僕自身息子がいる立場になったからだろうか、改めて読み返すと、 息子の活躍を喜びながらも身を案じる母親の文面にひどく共感してしまった。 カンボジアでその亡き骸を確認したときの両親の姿を思うと、込み上げてくるものがある。

最後に、一ノ瀬泰造が目指したアンコールワットは、今や最もポピュラーな世界遺産の一つだ。 確かに素晴らしい建造物でレリーフも美しく、芸術的にも見るべきところは多いだろう。 しかし、かつてはクメール・ルージュの拠点であり、弾痕もまだ残っている。 撤去が進んでいるものの周辺には地雷もまだ埋まったままだ。

訪れる機会があれば、カンボジアの痛々しい歴史にもぜひ目を向けて欲しい。

地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫)
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南島ぶちくん騒動 椎名誠

Posted 1月 10th, 2010 by kzmr and filed in 椎名誠

1990年に映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」の撮影のため、椎名誠とそのクルー達が石垣島で約一ヶ月半過ごしたときの滞在記&エッセイ&写真集。映画撮影時の裏話や地元の人たちとの交流がエッセイやモノクロ写真で記録されている。また、あとがきとして、10年後、つまり2001年に再訪したときの話が収録されている。

100ページ強ほどのボリュームで、写真が多く、文章は少ない。石垣島、あるいは八重山のゆるい空気に浸るにはそれくらいがちょうどいいのかもしれない。映画撮影時の裏話が多いが、本書を楽しむのに映画を見ているかどうかは全く関係ないだろう。地元の人たちに協力してもらいながら、みんなで作品を作り上げている様子がなんとも微笑ましい。

子どもたちのモノクロ写真が何枚も掲載されており、そこはかとなくノスタルジーを誘うが、1990年なので実はそんなに昔ではないことに驚く。きっと今でもそんなに変わっていないだろう。読後感が非常に心地いい。

率直に言って、これといった見どころや際立つ特徴がある本ではない。
しかし、じわじわと石垣島に行きたくなってくる。いい本だ。

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おすすめ度の平均: 3.5

4 沖縄の空気感が漂う
3 オリジナルとの違いは大きい

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ホノカアボーイ 吉田玲雄

Posted 1月 1st, 2010 by kzmr and filed in 吉田玲雄

ハワイ島・ホノカアの古い映画館で映写技師として働いた日々がゆるやかに綴られている著者の実体験をベースとした物語。2006年に単行本刊行。2009年同名で映画化。同じく2009年文庫化。

ホノカアは、ハワイ島の住民ですら「なにもないところで退屈でしょ」と言うほどの小さな村。そのホノカアに70年の歴史のある古い映画館があり、著者はそこで映写技師として働くことになる。

ドラマティックな出来事があるわけではなく、魅力的なローカルな人たちや日々のことが、ゆるやかな空気感で、ほんわかと描かれている。ユーモラスに描写されているが、映画や自然、そしてホノカアに対する愛が行間に満ちていて、読んでいてとても心地いい。特にビーさんという料理が上手で粋なおばあちゃんとのラストシーンはあたたかい涙が込み上げてきた。

旅本(旅に出たくなる本)には鉄板の共通項がある。
それはローカル(現地の人々や文化)に対する尊敬や愛があることだ。
本書はそれを200%満たしていると言えるだろう。
いつかハワイ島に行かねば。
絶対に行きたい場所がまた一つ増えた。

最後に著者のバックグラウンドが興味深かったので紹介しておく。
著者の吉田玲雄はライター・写真家という紹介が多いが、モデルとしてのキャリアもあり非常に男前。そして本書中で鞄屋と紹介されている著者の父は「Porter Classic」(吉田カバンのメインブランド)の代表取締役・吉田克幸。なお著者自信も現在取締役を務めている。最後にもう一つ。父の知人として登場する日本の女優「キョン」とは小泉今日子のことで、映画版では主題歌を務めた。

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おすすめ度の平均: 4.5

5 懐かしきホノカア。。。
5 ほんわか
4 ホノカアボーイ

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