イスラム飲酒紀行 高野秀行

「私は酒飲みである。休肝日はまだない」というアル中一歩手前の辺境作家・高野秀行がイスラム圏各国の飲酒事情をルポ。週刊SPA!にて不定期連載された「イスラム飲酒紀行」の単行本化。2011年6月。

マリファナや麻薬または女などには目もくれず、ときには危ない橋を渡って酒を求める著者。タブーとされている飲酒事情とともにイスラムの人々のリアルな姿も徐々に明らかに!?

いやしかし、なんて面白いんだろう。

  • 日本では普通に手に入る酒(入手が難しい地酒の場合もあるが・・・)をわざわざ禁じられている国で探し求める著者。
  • 著者に振り回される森、織田、末澤各氏のなかなかの名脇役っぷり。
  • 最初は「酒はない!」と突っぱね、別れ際に「酒ほしいのか?」と言ってくる心優しい地元の人々。
  • で、結局なんだかんだ酒飲みはどこにでもいて、彼らなりの飲み方で飲酒を楽しんでいる。
  • で、結局彼らといっしょにわいわい飲んでいる著者一行。

おおよそこんな感じだが、各地でいろいろ異なる事情があり、出会う人々にも個性があって、全く飽きない。人が行かないところに行って、人がやらないことをやり、それを面白おかしく書く、とはよく言ったものだ。まさにその通り。

捕まるリスクを冒してまでハイネケンを飲む必要なんてないじゃないか。しかし、その酒を入手する過程で見えてくる人々の素顔や実情に親近感がわいてたまらない。

高野秀行の著書では今まで遠かった世界(辺境)や文化が、身近にそして少し滑稽に描かれている。本書を読む前は、刺激的なタイトルだし、不謹慎で不快に感じる人もいるのかなと思ったが、いったん読み始めれば全くそんなことはない。笑いで腹を抱えながら安心して読んだ。

なぜかといえば、やはり著者がその文化と人々を心底敬っているからなんだろうなと。

面白おかしい本なので、そんな真面目な歯の浮いたセリフは一言も書いてないが、どの著書からも感じることであり、僕が高野秀行が大好きな理由でもある。

全力で続編希望。もっともっとイスラム圏で飲酒紀行をしてほしい。(捕まらない程度に。)

イスラム飲酒紀行
イスラム飲酒紀行
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高野 秀行
扶桑社
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全東洋街道(上) 藤原新也

全東洋街道は藤原新也が1980〜81年にかけてトルコから高野山までの自身の旅を記録したフォトドキュメンタリーである。
1982年毎日芸術賞受賞作。
本書上巻はトルコ・イスタンブール、アンカラから黒海、シリア、イラン、パキスタンを経て、インド・カルカッタまでをカバーしている。

この全東洋街道をどういう内容の作品か、説明するのは難しい。
その文章は旅行記あるいはルポルタージュであり、詩でもある。
その写真は報道写真のようなドキュメンタリーであり、芸術でもある。

インド・カルカッタ。
ある夜、著者が定宿としている雑居ビル(女郎屋もある!)の屋上で、
カルカッタという街固有の匂いを「街の精液の匂い」と過激に表現している。

風が吹いて街がまた匂ってくる。
街の精液の匂いだ。
日々放出され腐敗し地面に浸み込み、壁にはりついている人々の汗、息、脂、排気ガス・・・鉄錆びの匂い、焼けた豚、山羊のなま肉、鼻を突く香辛料、熟したパパイヤの甘い香、食堂から吹き出される焼けたココナッツオイル、祭壇の香煙、熱帯の女の化粧、男の髪のマスタードオイル、ジャスミンの香、腐った河、なめし皮、大麻の煙、街路樹・・・昼間の太陽の残り香・・・そして雨の匂い。

しかし、これほどインドの街のあの匂いを再現している描写が他にあるだろうか。
その上、どことなく詩のような響きがあり、いつの間にか読者をトリップさせる。

本書の旅から30年近く経た今、どの街も表面上の様相は大きく変わり、
旅の情報源としては機能しないかもしれない。
しかし、本書の芸術性と価値は間違いなくこれからも高まっていくだろう。

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)
藤原 新也
集英社
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おすすめ度の平均: 4.0

4 トルコの暗さ
4 雨が降ったら、ぬれる。
5 旅行が好きな人もそうでない人も
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