LCCで行く!アジア新自由旅行 著者:吉田友和

昨今話題のLCC(Low Cost Carrier)を乗り継いでアジア7カ国を10日間で巡る。運賃総額はなんと3万5000円。新しいスタイルのアジア自由旅行とはどんなものなのか。2012年7月6日刊行。文庫書き下ろし。

LCC元年と言われる2012年。LCCとは何ぞやを解説する本は数あるが、実際のところそれでどんな旅行ができるのかを記した本は本書が最初かもしれない。格安であちこちを周遊できるLCCは旅の可能性を広げる画期的な手段となるのか?著者はスマホ(スマートフォン)やiPadなどのデジタル機器を使いこなす新世代の旅行作家・吉田友和氏。これぞまさに新スタイルとも言うべきアジア旅行が記されている。

以下、利用LCCと発着地。

  • ピーチ航空 札幌(新千歳)➡大阪(関空)
  • ジェットスター・アジア航空 大阪(関空)➡台北(桃園)
  • セブパシフィック航空 台北(桃園)➡マニラ
  • タイガーエアウェイズ マニラ(クラーク)➡バンコク
  • タイ・エアアジア バンコク➡ホーチミンシティ
  • ライオンエア ホーチミンシティ➡シンガポール
  • バリューエア シンガポール➡デンパサール
  • インドネシア・エアアジア デンパサール➡クアラルンプール
  • エアアジアX クアラルンプール➡東京(羽田)

個人的には地を這うようなアジアの陸路の旅が好きだ。公共の交通手段が途絶えるような最果ての村まで行ってみたいという願望が常にある。本書はその正反対とも言えるような、空路で身軽にあちこちを飛び回る旅の話。どうも情緒のなさそうな旅だなぁと思って読み始めたが、読み終えてみるとたいへん面白かった。著者はあとがきで次のように言っている。

LCCとは突き詰めれば航空便の変化形にすぎない。いわば旅のツールの一つにすぎないのだ。それ以上でも、以下でもないと思う。

ツールを使うことでどう旅を発展させられるか。一言で言えばそれが本書に記されていることであり、旅行記であると同時にトラベルハック本でもある。正直いくら安くても同じ旅程で旅をしたいとは思わない。ただLCCをうまく利用すれば、より自分のしたい旅行を実現しやすくなるんだろうなと。そういう期待というか希望が湧いてくる内容だった。アジア旅行好きなら必読でしょう。 

LCCで行く! アジア新自由旅行 (幻冬舎文庫)
4344418905

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

あの空の下で 吉田修一

小説家・吉田修一が2007〜2008年にかけてANAの機内誌『翼の王国』で連載していた短編小説・エッセイを収録。2008年10月単行本刊行。2011年5月文庫化。

著者・吉田修一は「パークライフ」「パレード」「東京湾景」などの代表作があり、さらに2010年公開され妻夫木聡と深津絵里が出演した映画「悪人」の原作者と言えば多くの人の知るところだろう。その吉田修一の旅や飛行機にまつわる短編小説、そしてエッセイがまとめられている。

吉田修一と旅という組み合わせに新鮮さを感じたのはきっと僕だけじゃないだろう。

都会派というイメージがすごく強くて、特に「パークライフ」。初めて読んだときは地方の学生だった僕に東京のイメージを深く刻みつけてくれた。舞台が東京だったり背景というというのもあるけど、やはり作風かな。淡々とクールにストーリーが展開して、淡白な人間関係のなかにどこか本質的なものが表現されているというか。うまく言えないけど。ともあれ、旅などという都会とは真反対のものに対しての文章なので、とてもわくわくして本書を手に取った。

まず12編収録されている短編小説。こちらはいずれもショートショートとも言えるような5分ほどで読める分量だが、いずれも心がフッと軽くなる話。そんな短い文章で登場人物のキャラを立てて感情移入させることができるのはほんとに素晴らしい。僕は陸の上で読んだけれども、機上で読めば旅前のわくわくや旅後の感慨をよりより強めてくれたことだろう。

そしてバンコク、ルアンパバン、オスロ、台北、ホーチミン、スイスにまつわる6編のエッセイ。個人的にはこちらが最大の見どころだった。

各土地での決してドラマチックではない出来事が綴られているのだがそれがいい。

「心細さとは決していい感情ではないのだろうが、旅先でふとこの感情に触れた時、次に目にする風景が、期待以上に鮮烈で、忘れがたいものになることがある」
「旅先で見つける普通というのは、なぜこんなにも愛おしいのだろうか」
小説と同様に洗練されたオシャレな文章だけど誰にでもよくある旅の一場面でのこういった思いに強く共感できた。
吉田修一は案外都会派ではないのかもしれない。

本書の一編を機上で読むことができた方はとても幸福だったと思う。
でも陸の上とはいえ僕らはこれをまとめて続けて一気に読めるのでそれはそれでとても幸福なことだ。

あの空の下で (集英社文庫)
吉田 修一
集英社 (2011-05-20)
売り上げランキング: 35909
blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

アジア極楽旅行 下川裕治

Posted 1月 29th, 2010 by kzmr and filed in 下川裕治

下川裕治のアジアシリーズ。徳間文庫書き下ろし。1996年10月。
長年アジアを旅してきた著者がディープなアジアを語る旅エッセイ。

目次は次の通り。

1章 アジアの旅の十二カ条
 ホテルの部屋ではウンコをしない
 駅前ティッシュをアジアへ持参する
 アジアの旅にはドルの現金を持っていく
 貧乏旅行者は女を買うな
 アジア好きなら車の免許を持つな
 アジアではすべての動力車がタクシーである
 中国人は寒さにめちゃくちゃ強いから注意しよう
 タバコを喫う人の権利は通用しないと思え
 アジアのホテルのクリーニングは申し訳ないほど安い
 アジアのギャンブルおばさんとは場を囲むな
 東南アジアではソファに座るな
 アジアの米は変幻自在であることを知れ

2章 アジアと日本の新しい関係
 都バスがラングーンを走る
 海を渡ったタマゴと魚肉ソーセージ
 三角折りトイレットペーパーのナゾ
 アジアに流出するセックス大国、日本

3章 日本とかかわるアジア人物語
 マウンの帰国
 エイズ青年の帰国
 ムイの恋
 アラカン人の日本

4章 激揺するアジア
 上海と広州
 中国に還る
 プノンペンの闇
 瞑想の国

1章と2章は著者の旅の経験談を中心にしたユーモアのあるエッセイ。多少アジアを貧乏旅行した経験のある方なら、ついつい「あるある」とか「へぇ〜」とかいつだかのテレビ番組みたいな相槌を打ちたくなるような面白話が満載だ。そして3章と4章。こちらは一転シリアスな話題となる。3章では著者のかかわったミャンマー人やタイ人、そしてアラカン人が来日して直面したリアルな現実が語られる。特に日本でエイズに感染したタイ人の青年の話はあまりにもリアルで切ない。4章のカンボジア、そしてミャンマーの政治に端を発する国の実情も決して我々が忘れてはならないことである。
面白いこともシリアスなこともひっくるめてアジア。そう実感できる一冊だ。

アジア極楽旅行 (徳間文庫)
下川 裕治
徳間書店
売り上げランキング: 522631
おすすめ度の平均: 3.5

3 ごちゃまぜエッセイ
4 比較文化論の論文が書けるかも
3 珍しく問題意識が前面に

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

アジア迷走紀行 下川裕治

下川裕治のアジアシリーズ。徳間文庫書き下ろし。2001年6月。 長年アジアを旅してきた著者が旅人視線で移り変わりゆくアジアを綴る。

章立ては以下の通り。

第一章 変わりゆくバックパッカー

第二章 新・アジア食事情

第三章 ちょっとおまぬけ、アジアンビジネス

第四章 アジア人間模様

第五章 それでも僕は旅をする

それぞれの章は数編のコラムからなっている。 個人的に特に面白かったものをピックアップしてみる。

アジアン・ジャパニーズ

本来社会からのドロップアウトの烙印を押されていたはずの貧乏旅行者が、アジアン・ジャパニーズによって市民権を与えられて沈没旅が正当化されたという。最近、カオサンを歩く日本人の歩き方が堂々としている気がするとのこと。確かにいつの間にか貧乏旅行=ドロップアウトではなくなってきているなぁと思った。

連鎖退社を選ぶOL達

仲の良い友人が会社を辞職することになり、話し相手がいなくなるという理由で辞職を申し出たタイのOLを例に、タイの労働観について述べられている。自分の能力を超えているものには手を出さず、就業時間が終わればさっさと帰る。日本人の半分くらいの労働力しかないのではと。その割には経営者は大風呂敷を広げるので納期は守れない 。しかし最近はその労働観も日本的になりつつあり、仕事がしやすくなる一方、どこか寂しい気もする・・・

成田空港密入国を追った日々

日本で不法に働くアジア人が社会問題になっていた頃、タイ人女性(手引きしているのはヤクザ)が密入国を試みた様子と手口が詳細に描かれている。手に汗を握ってしまう。今の成田空港が平和なのは、日本経済の後退が彼らの日本熱を奪ったからだという。

ロスマンズが消えていく

世界的に喫煙者が少なっているがアジアも例外ではない。空港などで喫煙スペースがどんどん限られてきている。しかも著者の好きな銘柄ロスマンズも姿を消すのは時間の問題とのこと。いずれ喫煙はノスタルジックな行為となっていくのかもしれない。

貧乏旅行でなくても安宿にひかれる

人からなんといわれようと安宿が気が楽だという著者に共感。僕もまた「部屋に体を合わせるタイプ」なのかもしれない。確かに高級ホテルってどうしても挙動不審になってしまうんだよなぁ。

全部で20編のコラムがあるが、どれも積年の経験から生まれた含蓄に満ちている。 読む人それぞれに興味深いものが見つかるだろう。

 

アジア迷走紀行 (徳間文庫)
下川 裕治
徳間書店
売り上げランキング: 746229
おすすめ度の平均: 4.0

4 変わりゆくアジア

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

極楽タイ暮らし―「微笑みの国」のとんでもないヒミツ 高野秀行

Posted 12月 19th, 2009 by kzmr and filed in 高野秀行

エンタメノンフの旗手・高野秀行がタイの文化やタイ人の気質について自らの経験をもとに記したコラム&エッセイ。

著者はチェンマイ大学で日本語講師とし働いた後、タイでビルマの少数民族(タイ系)のゲリラと交流したり、在日タイ人向け新聞の記者として働いたりしている。
非常にユニークな関わりを持っているが、本人曰く「タイとボロい赤い糸で結ばれている」とのこと。「ボロい」という表現が絶妙だよね。

さてそんな著者がタイについてのあれこれを語るのだが、そこはエンタメノンフという新分野の代表的作家。
目次を見るとコラムのタイトルがそんじょそこらのゴシップ誌の一面よりもグサグサささってくる。
いくつか紹介しよう。

・知るとガッカリ?微笑みの秘密
・お金持ちはハンサムだ!
・迎えをすっぽかされたゲリラの長老
・タイ女性の脚線美への執念
・ゆ〜るゆるの「ゆるやかな社会」
・イヌはヒトの鏡
・タイ人と中国系タイ人の真相
・本当のタイの娼婦事情

ついついたくさん紹介してしまったが、全40編あるし、人それぞれささる角度が違うはずなので、ぜひ目次を眺めていただきたい。
タイトルにひかれて読み始めたが最後、高野秀行の絶妙な語りにズブズブとはまっていくだろう。

さて、ここまでは著者の高野秀行に焦点を合わせて紹介したが、もう一つの主役も紹介しなければ。

そう、タイである。

本書は40編のコラムが10編ずつ次の4つの章で構成されている。
・サバーイ(元気だ、気軽だ、都合がいい)
・サヌック(楽しい)
・サドゥアック(便利だ、都合がいい)
・マイペンライ(大丈夫、たいしたことない)
この四つの言葉だけでタイ人の気質をある程度表せるとのこと。言ってみればタイ人の素だ。
これはタイを訪れたことがある人ならば、まず納得するんではないだろうか。

本書が面白いのはタイについておもしろおかしく書かれているからではない。
そのゴシップ的なタイトルに反して、内容は極めて誇張が少なく、事実を踏まえて書かれている。
つまり、タイそのものがおもしろいのだ。

まとめると・・・
高野秀行がタイについて書いていて面白くないはずがない!!
タイに興味があってもなくても、絶対面白いから読んでみてください。

極楽タイ暮らし―「微笑みの国」のとんでもないヒミツ (ワニ文庫)
高野 秀行
ベストセラーズ
売り上げランキング: 9362
おすすめ度の平均: 4.5

4 タイ人・タイ王国を知りたければ読むべし
4 タイで日本語を教える
5 微笑みの国 タイ
4 懐かしい思い出と共に
5 読んで極楽、見ても極楽

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ