極楽タイ暮らし―「微笑みの国」のとんでもないヒミツ 高野秀行

Posted 12月 19th, 2009 by kzmr and filed in 高野秀行

エンタメノンフの旗手・高野秀行がタイの文化やタイ人の気質について自らの経験をもとに記したコラム&エッセイ。

著者はチェンマイ大学で日本語講師とし働いた後、タイでビルマの少数民族(タイ系)のゲリラと交流したり、在日タイ人向け新聞の記者として働いたりしている。
非常にユニークな関わりを持っているが、本人曰く「タイとボロい赤い糸で結ばれている」とのこと。「ボロい」という表現が絶妙だよね。

さてそんな著者がタイについてのあれこれを語るのだが、そこはエンタメノンフという新分野の代表的作家。
目次を見るとコラムのタイトルがそんじょそこらのゴシップ誌の一面よりもグサグサささってくる。
いくつか紹介しよう。

・知るとガッカリ?微笑みの秘密
・お金持ちはハンサムだ!
・迎えをすっぽかされたゲリラの長老
・タイ女性の脚線美への執念
・ゆ〜るゆるの「ゆるやかな社会」
・イヌはヒトの鏡
・タイ人と中国系タイ人の真相
・本当のタイの娼婦事情

ついついたくさん紹介してしまったが、全40編あるし、人それぞれささる角度が違うはずなので、ぜひ目次を眺めていただきたい。
タイトルにひかれて読み始めたが最後、高野秀行の絶妙な語りにズブズブとはまっていくだろう。

さて、ここまでは著者の高野秀行に焦点を合わせて紹介したが、もう一つの主役も紹介しなければ。

そう、タイである。

本書は40編のコラムが10編ずつ次の4つの章で構成されている。
・サバーイ(元気だ、気軽だ、都合がいい)
・サヌック(楽しい)
・サドゥアック(便利だ、都合がいい)
・マイペンライ(大丈夫、たいしたことない)
この四つの言葉だけでタイ人の気質をある程度表せるとのこと。言ってみればタイ人の素だ。
これはタイを訪れたことがある人ならば、まず納得するんではないだろうか。

本書が面白いのはタイについておもしろおかしく書かれているからではない。
そのゴシップ的なタイトルに反して、内容は極めて誇張が少なく、事実を踏まえて書かれている。
つまり、タイそのものがおもしろいのだ。

まとめると・・・
高野秀行がタイについて書いていて面白くないはずがない!!
タイに興味があってもなくても、絶対面白いから読んでみてください。

極楽タイ暮らし―「微笑みの国」のとんでもないヒミツ (ワニ文庫)
高野 秀行
ベストセラーズ
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おすすめ度の平均: 4.5

4 タイ人・タイ王国を知りたければ読むべし
4 タイで日本語を教える
5 微笑みの国 タイ
4 懐かしい思い出と共に
5 読んで極楽、見ても極楽

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全東洋街道(下) 藤原新也

全東洋街道は藤原新也が1980~81年にかけてトルコから高野山までの自身の旅を記録したフォトドキュメンタリー。
1982年毎日芸術賞受賞作。

本書下巻はチベット、タイ・チェンマイ、ビルマ・ラングーン、上海、香港、ソウル、そして高野山。
上巻から引き続き、概念的なのに忠実でもある独特の描写と、芸術的とさえ言える写真で綴っている。

まず印象的だったのは、チベット・ラダック地方のさらに山奥の辺鄙な寺で、その僧侶と同じく極限まで切り詰めた生活を行うことだ。
食事に関しては、夕食がない上に主食はパパという土のかたまりのようなもの。著者は五日目まで心身ともに衰弱してゆく。
そして六日目。

私は六日目の舌の革命というものを未だ忘れ難く思い出す。人の生きていく力の神秘に今でも驚いている。その六日目、私は忽然とあの大きな土のかたまりのようなものを全部たいらげた。とつぜん、それに味を感じ、おいしいと感じはじめたのだ。この時、今までほとんど私のことに関心を寄せなかった僧たちの顔に笑みが浮かんだのを見て私は内心ドキリとした。

舌の革命。
これは本当に経験した者にしかできない表現だ。
こういうフレーズに出会えるから旅行記や紀行文は面白い。

ビルマ・ラングーン、チェンマイ、上海を経て、香港へ。
ここで著者は、かつて豚の膀胱を浮き輪がわりに広東から泳いで渡ってきた兄弟と出会う。
このくだりはほとんどがその兄弟の声で展開されるのだが、妙に心に響いてきた。

・・・思えばもうあれから十四年も経ってるわけだな。こんなみすぼらしい生活やってるから家族に手紙も書けない始末だ。

そして雪のソウルを経て、高野山へ。
ここでこの1年以上に渡る東洋の旅を振り返る。

キリスト教、イスラム教、ヒンドゥ教、仏教。
鉱物世界と植物世界。抽象環境と自然環境。
これらのキーワードで東洋を総括し、東洋の東の果て、日本を思索する。

本書に綴られているのはほぼ30年も前の東洋の異国のことである。
にも関わらず、ものすごくノスタルジーに近い感情を呼び起こされる。
異国の地であるのに、どういうわけか原風景に出会ったような不思議な気持ちになることがあるが、まさにそういった不思議な気持ちに何度もさせられてしまう。
本書を読むという行為はそれ自体が一つの旅と言えるかもしれない。

全東洋街道 下 (2) (集英社文庫 153B)
藤原 新也
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4 チベットの空
5 フスマを食べる・・?

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