ホノカアボーイ 吉田玲雄

Posted 1月 1st, 2010 by kzmr and filed in 吉田玲雄

ハワイ島・ホノカアの古い映画館で映写技師として働いた日々がゆるやかに綴られている著者の実体験をベースとした物語。2006年に単行本刊行。2009年同名で映画化。同じく2009年文庫化。

ホノカアは、ハワイ島の住民ですら「なにもないところで退屈でしょ」と言うほどの小さな村。そのホノカアに70年の歴史のある古い映画館があり、著者はそこで映写技師として働くことになる。

ドラマティックな出来事があるわけではなく、魅力的なローカルな人たちや日々のことが、ゆるやかな空気感で、ほんわかと描かれている。ユーモラスに描写されているが、映画や自然、そしてホノカアに対する愛が行間に満ちていて、読んでいてとても心地いい。特にビーさんという料理が上手で粋なおばあちゃんとのラストシーンはあたたかい涙が込み上げてきた。

旅本(旅に出たくなる本)には鉄板の共通項がある。
それはローカル(現地の人々や文化)に対する尊敬や愛があることだ。
本書はそれを200%満たしていると言えるだろう。
いつかハワイ島に行かねば。
絶対に行きたい場所がまた一つ増えた。

最後に著者のバックグラウンドが興味深かったので紹介しておく。
著者の吉田玲雄はライター・写真家という紹介が多いが、モデルとしてのキャリアもあり非常に男前。そして本書中で鞄屋と紹介されている著者の父は「Porter Classic」(吉田カバンのメインブランド)の代表取締役・吉田克幸。なお著者自信も現在取締役を務めている。最後にもう一つ。父の知人として登場する日本の女優「キョン」とは小泉今日子のことで、映画版では主題歌を務めた。

ホノカアボーイ (幻冬舎文庫)
吉田 玲雄
幻冬舎
売り上げランキング: 142355
おすすめ度の平均: 4.5

5 懐かしきホノカア。。。
5 ほんわか
4 ホノカアボーイ

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

若き数学者のアメリカ 藤原正彦

Posted 11月 30th, 2009 by kzmr and filed in 藤原正彦

数学者である著者が1970年代前半、アメリカに研究員(後に助教授)として滞在したときのことを記した紀行文&エッセイ。
1978年日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。

本書は大きく以下の3つに分けることができる。
・ハワイ、ラスベガスを経由してミシガンへ向かう道のり。(紀行文)
・ミシガン大学での研究員としての生活。(滞在記)
・コロラド大学で助教授となってからの考察。(日米文化比較)

本書は色々な読み方ができるので、読む人によって感想も大きく異なるだろう。
僕が特に興味深かったのは前半のハワイ、ラスベガスだ。

ハワイではアメリカ人に囲まれながら日本人でただ一人真珠湾クルーズに参加し、アメリカ視点の解説に「アメリカ対私」という意識を強くする。
簡単に言えば「日本人をなめるな」ということだが、若さゆえの熱気が強く感じられ、数学者と言っても一人の若者なんだと親近感がわいた。
そしてラスベガスではギャンブルに熱くなり、なんだかんだと理屈をこねては挑み、結局当面の生活費まで注ぎ込んでしまう。
まるで名著『深夜特急』を読んでいるようだ。

とは言え、若さだけで終わらないのも本書の面白いところ。
中盤ではミシガンでの研究員生活が描かれ、アメリカという異文化のなかで生きる日々の葛藤や不安や苦悩が心に迫ってくる。
ハートウォーミングな出会いもあり、最終的にコロラド大学の助教授という名誉あるポストを得たときは、自分の事のようにうれしくなった。

さて、最後の章ではアメリカと日本の学生を比較しながら日米の文化比較の評論めいてくるのだが、日本人は日本人らしく振る舞うことがアメリカ社会に馴染む最良の方法だと言っているのが印象的だった。

本書は留学であれ旅行であれ、異文化に飛び込んでいく勇気を与えてくれるだろう。
異文化に対して少なからず恐怖や不安を感じ、留学や旅を躊躇している若者にぜひ読んでほしい本だ。

若き数学者のアメリカ (新潮文庫)
藤原 正彦
新潮社
売り上げランキング: 23677
おすすめ度の平均: 4.5

5 遅咲きの青春期
5 脚色ありやなしや
4 20のころ読書
5 思わず感情移入してしまいました
3 評価がむずかしい…

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ