だから混浴はやめられない 山崎まゆみ

Posted 2月 1st, 2012 by kzmr and filed in 山崎まゆみ

温泉ライターとして10年以上のキャリアがある著者が混浴の魅力を余すことなく綴った一冊。2008年10月刊行。

少子化や単独世帯の増加で、家族の団欒というものが減ってきている現代。また、かつて盛んに行われていたが、なくなりつつあるご近所づきあい。希薄になりつつある人との触れ合いの原点にも思えるのが、混浴風呂での出会いであり語らいである。
前書きより抜粋

冒頭のこの文章からも分かるように、キャッチーで挑戦的な本書のタイトルとは裏腹で、いたって真剣に混浴風呂の魅力が綴られている。色っぽい内容だけを期待して開く本でないことはたしかだ。

目次

第1章 そこは恋が始まる場
第2章 主導権を握るのは、やっぱり女性
第3章 失われた原風景を求めて
第4章 良質な湯と豊富な量、そこは理想の温泉郷
第5章 混浴に学ぶ人としての作法
第6章 混浴というセラピー

第1章は思わせぶりな見出し。男性からすれば女性と混浴なんて想像するだけで素敵だけど、
喜びましょう、女性の目から見ても混浴風呂では男性が色っぽく見えているらしいですよ!
でも実際本当にその場に出くわすと案外ガチガチになってしまう気がするな。第2章では一度慣れてしまうと、より混浴を楽しんでいるのは女性の方だよというような内容。なんか納得。
さ て、本書の真骨頂はここから。第3章、第4章では混浴の成り立ちや行為を掘り下げ、本質に迫っていく。スケベ心で読み始めた人もガッカリするどころか、 きっと引きこまれていくはず。
著者の豊富な知識や経験にもとづく考察が面白いというのもあるけど、やはり混浴そのものが奥深いということなんだろう。
第5章、第6章では著者のこれまでの経験や出会いをもとに、混浴から得られる学びや癒しが実例をもって紹介される。けっこうじんわりくる話もあり、読み終えたときにはそれこそ温泉から出てきたばかりのようなほっこりした気分になった。

さしづめ混浴の入門書と言ってよいかもしれないが、「だから混浴はやめられない」というタイトルどおり、著者がいかに混浴に魅力を感じているかが強く伝わってくる。かなり熱い混浴入門書だ。混浴という文化が細々ながらも残っている日本に生きていてよかったと素直に思う。
さてさて。巻末に著者の薦める混浴温泉ベスト50が掲載されているのである。いくしかないでしょ!
 

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てくてくカメラ紀行 石川文洋

Posted 10月 10th, 2010 by kzmr and filed in 石川文洋

報道カメラマン石川文洋がカメラを持って徒歩で日本縦断した。
風景、人々、動植物。様々なものにカメラを向けて日本を綴る。

石川文洋65歳。
2003年7月15日、日本の最北端、北海道・宗谷岬を徒歩で出発して、
同年12月10日沖縄・那覇に到着。日本海に沿って3300km歩いた。
本書は道中で撮影した様々な写真とその土地ごとの感想やコラムで構成されている。

石川文洋と聞くと戦場カメラマンというイメージが強いのだが、
それらの土地へ以前に撮影で訪れた際の回想も多く、
実はこれまでに様々な物事を撮影してきたということが分かる。
本書に収められている写真や文章はノンテーマなだけに
その知見の幅広さや愛すべき人となりがダイレクトに伝わる。

本当にじんわりと面白くなってくる本だ。

舞台は現代の日本で、当然誰もが通れる道を進んでいるわけだから、
そうそう目新しいものがあるわけではないのだが、どこか異国のように錯覚することがある。
そのフィルターはもちろん著者の戦場を主とした様々な経験で培われたものだろうが、
徒歩というもっともスローな移動手段での旅によるところもかなり大きいのではと思う。

おそらく、ある地点から別の地点へ素早く移動してしまうと、
大きな変化に目を奪われて、微細な変化には気付きにくくなるのではないか。
ゆっくりした移動だからこそ、多くの人が目を止めない微細な変化に敏感になることができ、
まるで異国にきたかのような発見の連続が可能になるんじゃないか。

恥ずかしながら、僕自身、横浜から新潟・直江津まで徒歩で旅したことがあるのだが、
土地から土地へ少しづつ移動していく日々、「雰囲気」がなんとなく変化していくのを感じた。
学生だった当時の僕はあまりに無知で、「雰囲気」を言葉に置き換えることができなかったし、
歴史を知らず、動植物の名も知らず、今でも「雰囲気」しか思い出すことができないけれども。

しかし石川文洋にはカメラがあり、多くの経験と知見がある。
ぜひ本書を手に取り、著者の昔話などに耳を傾けながらゆっくり日本を再発見していただきたい

あぁ、てくてく歩いて旅したい。

てくてくカメラ紀行―北海道‾沖縄3300キロ (エイ文庫)
石川 文洋
エイ出版社
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街道をゆく〈6〉沖縄・先島への道 司馬遼太郎

Posted 1月 18th, 2010 by kzmr and filed in 司馬遼太郎

「街道をゆく」は、司馬遼太郎が各地の街道を歩きながら、独自の論を交えつつその地理・歴史・文化を綴る紀行文である。
今回の「街道をゆく」は1974年に沖縄・八重山諸島を旅した記録。目次と歩いた道は次の通り。

1章 那覇・糸満

・那覇へ
・沖縄について
・那覇で
・ホテルの食堂
・空港の便所で
・糸満にて

那覇市~糸満市

2章 石垣・竹富島

・石垣島
・宮良殿内(みやらどんち)
・竹富島へ
・竹富島のT君
・東シナ海の見張所
・森の中の鍛冶遺跡
・鉄と星砂
・蒐集館(しゅうしゅうかん)の館主
・波照間の娘

犬の井戸〜牛岡(ンブフル)〜鍛冶場遺跡~星砂の浜~喜宝院蒐集館~島仲家~安里(あさと)家

3章 与那国島

・与那国島へ
・南国食堂
・小さな魚市
・商売と商人
・女の長の世
・花酒
・村の劇場

祖納(そない)~波多(なんた)浜~門中墓(ムンチュバカ)~サンニヌ台~トゥング田

wikipedia
沖縄・先島への道(ダイジェスト)

ひとこと
特に印象に残ったのは1章の「空港の便所で」だ。「排泄された大便がそのまま流されずにでんとうずくまって」いて、地元の青年は「こんなことをする人、本土の人にきまっているよ」と言う。司馬遼太郎は「なるほど、これが沖縄人からみた本土人の象徴かもしれない」と考えた。さらに、「あらあらしく脱糞してそのまま行ってしまうという感覚は、本土資本の沖縄の土地買い占めというたけだけしさにも、むろん通じている」と言っている。真面目な話なのか冗談交じりなのか、微妙な言い回しがおかしくて、ついつい笑ってしまった。
この脱糞の話もそうだが、どうも本書での司馬遼太郎はいつもより感情的というか自己主張が多いような印象を受けた。例えば、石垣島のリゾートホテルに宿泊した際に「モーターボートの爆音が、なんだかばかばかしかった」と遊びに興じる若者をはっきり非難しているし、逆に波照間出身の娘と他愛のない、また実のない会話を楽しんだりしている。八重山の開放的な空気が著者をそうさせたのだろうか。こんなに茶目っけのある作品は珍しい。
とは言え、やはり沖縄問題や八重山の歴史・文化に対する造詣や考察は非常に興味深い。1974年に書かれたものではあるが、搾取されていた時代、そして痛々しい戦争の時代など、僕ら一般の旅行者が知らなきゃいけないことは山ほどある。沖縄・八重山を深く知る上でマストな一冊だ。

ワイド版 街道をゆく〈6〉沖縄・先島への道
司馬 遼太郎
朝日新聞社
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おすすめ度の平均: 4.0

3 司馬さんと須田画伯の沖縄珍道中。
5 司馬さんが見た沖縄。
4 どこかうつろな旅

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南島ぶちくん騒動 椎名誠

Posted 1月 10th, 2010 by kzmr and filed in 椎名誠

1990年に映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」の撮影のため、椎名誠とそのクルー達が石垣島で約一ヶ月半過ごしたときの滞在記&エッセイ&写真集。映画撮影時の裏話や地元の人たちとの交流がエッセイやモノクロ写真で記録されている。また、あとがきとして、10年後、つまり2001年に再訪したときの話が収録されている。

100ページ強ほどのボリュームで、写真が多く、文章は少ない。石垣島、あるいは八重山のゆるい空気に浸るにはそれくらいがちょうどいいのかもしれない。映画撮影時の裏話が多いが、本書を楽しむのに映画を見ているかどうかは全く関係ないだろう。地元の人たちに協力してもらいながら、みんなで作品を作り上げている様子がなんとも微笑ましい。

子どもたちのモノクロ写真が何枚も掲載されており、そこはかとなくノスタルジーを誘うが、1990年なので実はそんなに昔ではないことに驚く。きっと今でもそんなに変わっていないだろう。読後感が非常に心地いい。

率直に言って、これといった見どころや際立つ特徴がある本ではない。
しかし、じわじわと石垣島に行きたくなってくる。いい本だ。

南島ぶちくん騒動 (幻冬舎文庫)
椎名 誠
幻冬舎
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おすすめ度の平均: 3.5

4 沖縄の空気感が漂う
3 オリジナルとの違いは大きい

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街道をゆく〈1〉甲州街道、長州路ほか 司馬遼太郎

Posted 1月 8th, 2010 by kzmr and filed in 司馬遼太郎

「街道をゆく」は、司馬遼太郎が各地の街道を歩きながら、独自の論を交えつつその地理・歴史・文化を綴る紀行文である。
第一巻となる本書の目次と歩いた道は次の通り。

1章 湖西のみち

・楽浪(さざなみ)の志賀
・湖西の安曇人
・朽木渓谷
・朽木の興聖寺

大津市~穴太(あのう)~安曇川町(あどがわ)~朽木谷(興聖寺)

2章 竹内街道

・大和石上(いそのかみ)へ
・布留(ふる)の里
・海柘榴市(つばいち)
・三輪山
・葛城山
・竹内越

天理市〜布留(石上神宮)〜三輪山(大神神社)〜竹内峠

3章 甲州街道

・武蔵のくに
・甲州街道
・慶喜のこと
・小仏峠
・武州の辺彊

八王子市〜小仏峠

4章 葛城みち

・葛城みち
・葛城の高丘
・一言主(ひとことぬし)神社
・高鴨の地

笛吹(火雷神社)〜森脇(一言主神社)〜高鴨神社

5章 長州路

・長州路
・壇之浦付近
・海の道
・三田尻その他
・湯田
・奇兵隊ランチ
・瑠璃光寺など
・津和野から益田へ
・吉田稔麿の家

下関市(赤間宮)〜山口市(湯田温泉・瑠璃光寺)〜津和野町〜益田市

wikipedia
甲州街道、長州路ほか(非常によくまとめられている)

ひとこと
ワイド版には言及されている地名や寺社名が記載された地図があり、著者の辿る道すじが分かりやすいのでおすすめ。旅行のルートを決めるのにも役立つ。
本書で特に印象深かったのはまず、竹内街道の三輪山の章あたり。三輪神社が日本最古の神社で、伊勢神宮の方がはるかに新しいというのは驚きだ。大和の国の成立以前からの先住民族なども登場し、たいへん興味深い。
五章の長州路も面白い。「長州人論は、おもしろい」と著者自身が言っているように、多くの長州出身の人物に言及する。特に幕末から明治初期にかけての時代に興味のある人は必読だろう。

ワイド版 街道をゆく〈1〉甲州街道、長州路ほか
司馬 遼太郎
朝日新聞社
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おすすめ度の平均: 3.5

4 これが、街道をゆくか。
3 歴史と地域

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