社会派ちきりんの世界を歩いて考えよう! ちきりん

Posted 6月 13th, 2012 by kzmr and filed in ちきりん

著者はChikirinの日記で有名な人気ブロガーちきりん。「おちゃらけ社会派」を名乗るちきりんが世界を歩いて「自分のアタマで考えた」ことの数々。2012年5月。

意外にもこれまで約50カ国を旅してきたという著者。訪れた国もミャンマーや崩壊前のソビエト連邦などユニークだ。さて本書の大きな特徴は、よくある紀行文のような旅先での出来事ではなく、旅をして得られた発見・知見に主眼が置かれていること。しかも単なる知識としてではなく、旅先での出来事から知見を得るまでのプロセスが気さくな文章ながらも丁寧に描かれている。

著者の前二作は生き方考え方に関するものだし、ブログでもそういった内容のエントリーが多い。本書は旅がテーマとはなっているが、そういった傾向が強く出ており、生き方考え方本の延長と捉えた方がよいかもしれない。

ただだからといって旅本として面白くないかといったらぜんぜんそんなことはなくて、旅先での出来事を後で振り返って得られる発見や考察は楽しみ以外の何物でもない。この土地はどうのあの土地はどうの、旅人同士で酒を飲みながらよくそんな言葉を交わしているはずだ。本気かどうかわからないが「何か学ぶために旅行するのは邪道」などと著者はあとがきに書いているが、知的な発見を目的とした旅もまた素晴らしいと思う。

ガチの紀行文もよいが、逆にこういう旅の本もたまにはいいなと思った一冊。

 

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

地雷を踏んだらサヨウナラ 一ノ瀬泰造

26歳でこの世を去った戦争カメラマン一ノ瀬泰造の書簡集。写真の掲載も多数。

著者の一ノ瀬泰造は1972〜1973年にかけてベトナム・サイゴン(ホーチミン)、 カンボジア・プノンペン、同じくシェムリアプなどで、ベトナム戦争やカンボジア内戦を取材。 多くの写真を撮影した。UPIニュース写真月間最優秀賞も受賞している。本書に収められている書簡は、そのときに日本にいる両親や友人、先生等に宛てたものである。 1999年浅野忠信主演で映画化され、話題となった。

本書で浮かび上がる素顔の一ノ瀬泰造は、野心的で、無謀で、そして底抜けに明るい。

そんな若さの溢れる著者だったから戦争の悲惨さを撮り続けることができたのだろう。まさに命をかけて、好きなこと=写真に取り組んだその姿はあまりにも眩しい。

若さとはこんなに素晴らしいものだったのかと感動せずにはいられなかった。

ぜひ若者に読んでほしい一冊だ。 また、僕自身息子がいる立場になったからだろうか、改めて読み返すと、 息子の活躍を喜びながらも身を案じる母親の文面にひどく共感してしまった。 カンボジアでその亡き骸を確認したときの両親の姿を思うと、込み上げてくるものがある。

最後に、一ノ瀬泰造が目指したアンコールワットは、今や最もポピュラーな世界遺産の一つだ。 確かに素晴らしい建造物でレリーフも美しく、芸術的にも見るべきところは多いだろう。 しかし、かつてはクメール・ルージュの拠点であり、弾痕もまだ残っている。 撤去が進んでいるものの周辺には地雷もまだ埋まったままだ。

訪れる機会があれば、カンボジアの痛々しい歴史にもぜひ目を向けて欲しい。

地雷を踏んだらサヨウナラ (講談社文庫)
一ノ瀬 泰造
講談社
売り上げランキング: 105074
blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

ミャンマー 失われるアジアのふるさと 乃南アサ

Posted 2月 10th, 2010 by kzmr and filed in 乃南アサ

軍事政権に対する僧侶のデモやサイクロン被害など、依然ネガティブなニュースが後を絶たないミャンマー。しかしながら旅行者の間では旅行前と後で大きく印象が変わる国として知られ、リピーターが非常に多い。そんなミャンマーで作家・乃南アサは何を見てどう感じたか。2008年6月刊行。

ヤンゴンやマンダレーといった都市、そしてインレー湖やバガンといった景勝地での出来事が断片的に綴られており、時系列にルートに沿って展開していくことの多い一般的な旅行記とは読み心地が大きく異なる。さすが作家(といっては失礼か)、一つ一つの場面の描写が美しく情景的だ。特に夜明けの世界三大仏教遺跡の一つバガンの仏塔群の描写はぐっと引き込まれた。章が終わるたびに、短編小説を一つ読み終えたかのような気にさせられた。ふんだんに配置されている美しい写真(撮影、坂斎清)もそれに一役買っているだろう。また、全く見返りを求めない無償の親切に対してどう報いたらいいのか著者が悩む場面があるのだが、僕自身もミャンマーで全く同じ経験があり、とても親近感がわいた。

ここまでつらつらといい場面ばかり述べたが、単純に叙情的で楽しい旅行記というわけではない。特に政治的な話題に言及しているときは非常にリアルで迫ってくるものがある。本書のエンディングで、日本語を勉強している若い僧侶が軍事政権に対する思いを憤りつつ語る。「今、ミャンマーの政治は悪いです。最低です」否応なしに2007年の僧侶のデモを想起させる言葉だ。冒頭にもあるが、日々実直にそして静かに仏に仕えてきた僧たちは、どれほどの思いを込めて起ちあがったのか。それを想像するだけでぐっと込み上げてくるものがある。

まとめると、本書では異国情緒に溢れる描写を楽しむことができ、さらにミャンマーという国の実情にも触れることもできるだろう。非常にバランスのとれた一冊だ。ミャンマーを直接自分の目で見て感じたいと思わせる力に満ちている。

ミャンマー―失われるアジアのふるさと
乃南 アサ
文藝春秋
売り上げランキング: 94852
おすすめ度の平均: 4.5

4 前書きが全てを語る
5 美しく、そして切ない国
5 初めての乃南アサ

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

メコン・黄金水道をゆく 椎名誠

Posted 1月 14th, 2010 by kzmr and filed in 椎名誠

2003年、世界の辺境を知る椎名誠がインドシナ半島を壮大なスケールで流れるメコン河を旅した。45日間かけてメコン河沿いにラオスからカンボジア、ベトナムと下った紀行文。
2004年単行本刊行。文庫もあり。

道のりはおおよそ以下の通り。

【ラオス】
シェンコック→ルアンナムター→ウドムサイ→ルアンパバーン→パクセ
【カンボジア】
シェムリアプ→トンレサップ湖→プノンペン
【ベトナム】
チャウドック→カントー→チャービン

椎名誠の紀行文は本当に安心して読むことができる。ざっくばらんな感じで楽しく読めるのに、現地の人たちの営みや文化に対する観察眼は鋭い。鋭いだけでなく、あたたかい敬意が込もっているので、僕らは素直に驚き、感動できるのだ。本書はその良さがすごく出ていて、椎名誠の代表作と言っていいのではないかと思う。僕自身メコン河を何度か旅行で訪れたこともあり、特別な思い入れがあるからかもしれないが。

メコン河ならではの多彩な漁法。
豊かな自然そのままの食文化。
質素ながらも力強く生きる人々。
読めば読むほど強烈に旅したい気持ちにかられてくる。随所に出てくる写真もいい。

メコンへの旅行を考えている人にとってはよき入門書になるであろう。
しかし、それ以上に、旅したことがある人におすすめしたい旅本だ。
そのとき言葉にできなかった感動が、ここに表現されている。

メコン・黄金水道をゆく
椎名 誠
集英社
売り上げランキング: 515117
おすすめ度の平均: 4.0

4 壮大でゆったりとしたメコンと時間の流れがそこにはある
4 「アジアのアマゾン」を縦断する旅

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ

さらば、ガク 野田知佑

Posted 1月 4th, 2010 by kzmr and filed in 野田知佑

漂泊のカヌーイスト野田知佑とともに日本や世界各地の川を下った世界初のカヌー犬ガクの写真集。実父(野田知佑)と養父(椎名誠)の追悼対談も収録されている。
2002年9月刊行。

釧路川、四万十川、ユーコン川、ノアタック川他。ガクはその14年の生涯で、野田知佑&その友人たちとともにたくさんの川を下り、またその大自然のなかでともに過ごした。「ガクが隊の一員であると主張してでかい顔してる」という焚き火のまわりの写真をはじめ、野田知佑と「対等なつき合い」をしていたカヌー犬ガクの姿はとても気高い。

この写真集はガクをもの珍しいカヌー犬として、アイドル的にもてはやしたものではない。その証拠に野田知佑はガクの死後、その毛皮でチャンチャンコをこしらえる。野田にとって、犬を飼うとはそこまですることなのだという。

「ぼくはガクに何もしつけをしなかった。彼を六年間預かってくれた椎名も同じだ」
「犬とふたりきりで荒野にいると、生き物として対等になる」
「好きなときに漕ぎ、好きなときに眠る」
「川旅中のガクとぼくの食事はだいたい同じだ」

これらの言葉やガクの写真を見て僕らが学ぶことができるのは、決して人間上位にならない犬との本当の付き合い方だ。そして僕らのもっとも近くにいる動物である犬との付き合い方を知ることは、もっと大きな意味を持つような気がしてならない。犬と僕らの関係がガクと野田知佑の関係に近づいていくとき、人間は動物や自然ともう少しうまくやっていけるんではないだろうか。少なくとも馬鹿げた行為はなくなるはずだ。

なにはともあれ、ガクが手付かずの自然のなかで生き生きと輝く姿を見てほしい。もしあなたの側にもパートナーがいるのなら、きっと一緒に出かけたくなるだろう。

さらば、ガク (文春文庫)
野田 知佑
文藝春秋
売り上げランキング: 321435
おすすめ度の平均: 5.0

5 犬とこんな関係でありたい
5 素敵な旅を有難う。
5 野田氏の心の痛み
5 自然と犬が好きな人のための本

blogram投票ボタン にほんブログ村 本ブログ 紀行・旅行記へ